一方で AI を活用した顧客ターゲティングでは、過去のデータから成約や解約に至ったパターンを AI が自動で学習し、将来的に成約や解約につながる顧客を予測するためのモデルを構築します。営業担当者はその予測モデルによって顧客ごとに算出された成約確率などのスコアとその予測スコアに至った説明が付帯する顧客リストを作成することが可能となり、リストに基づいて DM や訪問営業を実施できます。その結果、ターゲットの選定に時間がかかることがなく、各担当者のスキルに依存しない顧客ターゲティングを実施することが可能になります(下図1の右側)。
それらのデータを DataRobot に投入すると商品を購入しそうな優良顧客に共通するパターンをデータから自動で学習し、予測モデルを構築します。そうすることで、あるお客様では翌月などの新たな顧客リストに AI スコアを適用して優先的に営業活動を行うべき顧客を特定し(下図3)、ターゲット精緻化による営業収益の向上を実現しました。
先ほどは単体の商品に対する AI スコアの活用でしたが、次は複数の商品に対する AI スコアを用いることで顧客毎にパーソナライズ化した提案を実現し、案件の成約率が向上した事例です。例えば、銀行の窓口営業で外貨預金と投資信託と保険の3つの商品を保有していたとします。そうした場合に、まず始めに、識別するデータとして
のデータを結合したデータセットを用意します(上図2)。ここまでは1つ目の事例と同様ですが今回は、データセットをそれぞれの商品で用意し、3つの予測モデルを分けて作成します。そして、新たな顧客リストに対して3つのモデルを適用し、顧客 ID で紐づけると各顧客ごとに各商品の購買スコアが算出されます(下図4)。これらの購買スコアをもとに提案商品を選定した結果、顧客のニーズに沿った商品を提案することができるようになり、案件の成約率の向上を実現しました。
金融業界では金融商品取引/販売法といった法律に加えて各金融機関毎にも厳格な取引ルール等が定められている場合がほとんどです。それらのルールを予測モデルに学習させてしまうことも一部可能ではありますが、完全に抜け漏れなくルールを網羅することは現実的ではなく外した場合のリスクは非常に大きいです。そのような場合には、AI スコアを振る前に特定の条件を適用させてターゲットリストを調整します。例えば、AI スコアを降順に並べて上から○○人の顧客にダイレクトメッセージを送る施策を打つ場合には、AIスコアを振る前に過去に拒絶された実績がないか、ブラックリストに載っていないかなどのルールを適用し、対象顧客をリストから除きます。その後に上から○○人の顧客を AI スコアをもとに抽出します。このように、逸脱した場合のリスクが高いルールであればなおさら予測モデルと組み合わせて抽出し、抜け漏れがないようにする必要があります。