DataRobotのデータサイエンティストの中野 高文です。
DataRobotはAIモデルを生成し、そのモデルの中身を理解し、最終的にシステムに組み込むまでの全プロセスを自動化してくれますが、加えて様々な外部ツールとアライアンスを組むことで、データ準備から予測を用いたアクションの実施まで、更に幅広いデータ活用の自動化を目指しています。例えば機械学習のインプットデータは1つの構造化テーブルデータとして準備いただく必要がありますが、弊社ではSQLやR、Pythonといったプログラミング言語を知らない方でもそのような作業を可能となるETLツールのTrifactaやAlteryxとアライアンスを組んでいます。またDataRobotの予測した値を現場の人たちが活用する際にわかりやすく表示できるようにTableauなどのBIツールともアライアンスを組んでいます。
DataRobotユーザー様の多くがAIを活用されている主要分野にマーケティングがあります。マーケティングはサービスを売っていく企業活動の根幹となる部分ですし、最近はWebでのマーケティングデータを蓄積すことが一般化してきてデータが豊富にあるという理由から小売、製造、金融、保険など業界に関わらずDataRobotが活用されています。そのマーケティング活動を自動化してくれるツールはマーケティングオートメーションと呼ばれ、弊社のユーザー様からも以前からDataRobotと連携できないのかといったお声をいただいていました。
そこでDataRobot Japanは2018/10/17にマーケティングオートメーションにおけるリーディングカンパニーのMarketo株式会社とパートナーシップを締結しました。これにより、DataRobotとMarketoをAPIで接続し、DataRobotの高精度なスコアリングに基づいてリアルタイムでMarketoがアクションを実施することができるようになりました。
DataRobotとMarketoの連携のマーケティングへの価値
マーケティングオートメーションは:
- 多くのデータソースからのデータを連携して一元化
- スコアリングすることでマーケティング行動のターゲットを選定
- eメールの送付やDSPでのターゲティング広告、CRMと連携した営業へのアクションの喚起などのマーケティングアクションまでを自動化
してくれます。これによりマーケターは日々メールを送付する繰り返しの作業から解放されるだけでなく、即時にメール送信を実施することができます。
しかしここで唯一問題となる事があるのはスコアリングです。これまではマーケターが自分の経験や勘に基づいてルールベースで行ってきた部分です。例えば、部長ならば50点、見積もりフォームダウンロードならば80点そしてユーザーのトータルの点数が150点を越えればインサイドセールスがコールをかける等です。しかし実際には:
- 多くのマーケティングチャネルの効果を正しく評価してスコア付けをすることが難しい
- 新たなマーケティング行動が日々増えていく中、その度にスコアを再評価するのは非常に時間がかかる
などの問題がありました。
今回DataRobotとMarketoの連携が可能になりこのスコアリングの問題が解消され、リアルタイムで高精度なマーケティングを自動化することができるようになりました。
スコアリングにDataRobotを使っていただくことにより:
- 全てのマーケティングチャネルを正しく評価したルールベースよりも高度な機械学習モデル を自動で生成し、スコアリングする
- 特徴量のインパクトや部分依存などといったDataRobotのインサイトを用いて全てのマーケティングチャネルの評価をインサイトとして得る
ことができるようになります。
DataRobotとMarketoの連携方法
DataRobotとMarketoの連携はMarketoのウェブフックよりDataRobotの予測API(Prediction API)を呼び出す事によって行われます。設定も簡単で、以下の4つを設定するだけでMarketoよりDataRobotのAPIが呼び出せます。
- 予測に使いたいDataRobotのプロジェクト・モデルID
- インプットデータ用のDataRobotの特徴量とMarketoフィールドの対応表
- DataRobotのAPIのアウトプットとMarketoフィールドの対応
- Authentification
この設定を行うだけでMarketoのウェブフックを通してDataRobotの予測値を自動かつリアルタイムに計算し、次のマーケティングアクションを行うことができます。以下はDataRobotからのレスポンス例です。
例えばWebのログをMarketoと連携しており、長い期間訪問がなかったユーザーが再度訪問したとします。Marketoでそのステータスのアップデートをトリガーに自動でウェブフックを用いて最新のデータを用いたユーザーの購入確率をDataRobotで作ったAIが計算します。その購入確率が一定より高い場合自動でメールをそのユーザーに送るなどのマーケティングアクションを自動で行うことができます。
DataRobotとMarketoの連携活用事例
DataRobotとMarketoを連携する事によってDSPでの配信など、マーケティングファネルの上部から、解約予測をCRM経由で営業と連携する等の下部まで、あらゆるマーケティングの場面で高精度なマーケティング活動のAI化が可能になります。
この連携をマーケティングに活かして非常に大きなROIを得られた事例がもうすでに出てきています。プレスリリースにも名前をあげさせていただいたSansan様の実際の事例が、来たる11/27(火)に開催予定のAI Experience 2018 Tokyoで発表されます。是非ご来場いただきDataRobotとMarketoの連携によってもたらされるマーケティングへの大きな変革を皆様に聞いていただければと思います。