2021 年の日本では、長く続くパンデミックのもたらす生活様式の変容から顧客接点のデジタル化やリモートワークといった、DX(デジタルトランスフォーメーション)が確実に定着し、今まで取得が困難であったアナログ情報がデジタル化されて取得可能になっています。
例えば、先進的な小売店では販売機会損失を減らすため、デジタルで顧客の購買体験を向上させています。消費者が店舗内で手にとったり試着したにも関わらずサイズ欠品で店頭で購入にいたらなかったとしても、モバイルアプリで商品バーコードをスキャンしてサイズ在庫が確認でき、オンラインで取り寄せて購買につなげることができます。その結果デジタル化しつつスタッフとの接点を減らし購買へつなげることが可能になっています。外食産業でも、注文端末としてタブレットの採用が増え、エンターテイメント性を高めながら、おすすめを表示したり接点がデジタル化され利便性が向上しています。入店待ちから、座席案内、注文、会計までがデジタル接点となり、もはや、スタッフと接することすらなく食事を済ませることができます。すべてのユーザー体験をデジタルデータとして取得することで、フードロス削減につながる需要予測等でデータが活用されています。
ビジネスデータの量が飛躍的に増加するにつれ、その価値も高まっています。しかし、多くの企業は、収集したデータの巨大な可能性を捉え、ビジネスに有効なインサイトに変えることに苦労しています。
「2022 年に AI で成功を勝ち取る 10 のキーポイント」と題して、AI の巨大なパワーを活用することで、企業がデータをどのように活用できるかを深く掘り下げていきます。2022年のビジネスにおけるデータ活用のヒントとなれば幸いでございます。
#1 ディシジョンインテリジェンス
自社のビジネスでは、どのように意思決定がされていますか?とてもシンプルな質問ですが、多くの組織にとって意思決定は不確実性に包まれた複雑なプロセスであり、泥沼化する可能性があります。そして、それは日に日に複雑さを増しています。実際、ガートナー社の最近の調査では、わずか 2 年前と比べて、65 %の意思決定がより複雑になり、より多くのステークホルダーや選択肢が関わっていることが分かっています(Gartner, How to Make Better Business Decisions、2021年)。現在の意思決定のペースでは、ビジネス上の意思決定が行われる状況が急速に変化していることに対応できないのです。何かを変えなければなりません。
機械学習の予測結果をそのままビジネス利用することは稀で、その他のビジネスルールと組み合わせて意思決定が行われることがほとんどです。機械学習の結果をビジネスルールエンジンシステムや、スプレッドシートにダウンロードして、システムに戻すという非効率なプロセスになっている例は多くみられます。
DataRobot のディシジョンインテリジェンスフローを使えば、機械学習モデルの予測に加えてビジネスルールに則った最適な業務上の判断に変換してスマートな意思決定を行うことを支援します。
#2 AI における信頼性
AI は、企業に多大な価値をもたらす強力なツールである一方で、AI に対する社会的信頼の喪失や、偏りや公正さにまつわる人々の懸念に関するニュースは数多く取り上げられています。利用中の AI システムをどの程度信頼できますか。
いったん AI ユーザーがシステムへの信頼を失うと、AI が展開するモデルや判断を信頼することが非常に困難になります。AI プログラムが拡大すると、システムを拡張し、全社共通プラットフォームとして AI の活用の達成がさらに難しくなる可能性があります。
AI ユーザーとシステムの間に信頼関係を構築し、ユーザーが導入したモデルとその判断を信頼できるようにすることが重要です。信頼を確立するには、透明性と説明責任を高めることから始まります。DataRobot では、AI システムの信頼を構成する要素を大きく 3 つに分類しています。
#3 公正、不偏、倫理的な AI
AI における信頼性に加えて、AI における倫理を具体的に定義することも重要です。AI は中立的な技術であるとは言い難く、ときに人間が暗黙的にデータに埋め込んでいる偏見が反映され、意図しない結果を招くリスクは広範囲に及びます。組織が AI の利用を拡大するにつれて、AI の影響力が増加し、バイアスや公平性は多くの懸念と議論の対象となっています。
キャップジェミニ・リサーチ・インスティチュートによる「AI における倫理」に関する顧客調査(2020年)では、約 60 %の組織が法的な精査を受けたことがあり、22 %の組織が AI システムによって行われた意思決定に対して顧客から反発に直面したことがあります。(Capgemini, AI and ethics – why is it important?, 2020)。加えて 顧客の 70 %は、組織が透明で公正なAIインタラクションを提供することを期待しています(Capgemini, AI and the ethical conundrum, 2020)。
では、この重要な問題に対して、何から取り組めばいいのでしょうか。
多くの企業にとって、AI の偏見や公正さをめぐる到達点は常に変化しているように感じられるかもしれません。しかし、自社の価値観をAIに取り込み、より良い公正な意思決定を行い、組織のリスクを軽減するためにできるステップがあります。影響評価を行い、社員をトレーニングし、バイアスと公平性の測定基準を特定し、モデルを監視するシステムが必要になります。
#4 テックスタックの統合: エンドツーエンドの AI
AI 技術の導入には大きな負担が伴うため、このような多額の先行投資を行うのはなぜでしょうか。その答えは 、プラスのリターンを無視することはできないからです。
調査によると、AI をリードする企業は、その 5 倍もの利益を生み出しています。ROI は、AI 導入に遅れをとっている後発組の企業よりも高いのです。(DataRobot, Driving ROI with AI, 2020)。実際、22 %の企業では 2019 年の収益の少なくとも 5 %が AI に起因しています(マッキンゼー・アンド・カンパニー、The State of AI in 2020)。
AI を導入する組織は生き残り、そうでない企業は大きな遅れをとることになります。
企業は、連携するように設計されていない別々のツールではなく、単一のエコシステムとなるエンドツーエンドの AI ソリューションを採用することが不可欠です。これは、企業が基盤となる技術インフラから独立できるようなソリューションを採用することを意味します。このアプローチでは、クラウド、またはオンプレミスの自社インフラのいずれでホストされているかにかかわらず、AI の成果物を自由に移動させながら、3大クラウド・プラットフォームのいずれかにデプロイして自社の AI を管理することができます。
なぜ MLOps が不可欠なのか?私たちは、稼働中のモデルから価値を得ていることを皆知っています。企業の競争上の優位性は、本番環境にあるモデルをいかに早く展開し、反復できるかによって生まれます。言い換えれば、スピードとスケールが重要です。そこで MLOps は、いくつかの重要な課題に対する解答を提供します。
MLOps は、AI の継続的な統合と展開のための単一の環境を提供し、それによって、ほとんどの組織が AI プロジェクトで直面する複雑さを大幅に軽減します。このソリューションにより、そのモデルがどこでホストされているか、どのように展開されているかにかかわらず、一元管理された場所内で、あらゆるものを、あらゆる場所で監視することができます。
#6 AI の民主化
民主化とは、AI を組織内の誰もが利用できるようにすることです。多くの企業では、AI は IT やデータサイエンスチームのものであり、その複雑さを構築、管理、理解できるのは技術者だけであるという認識があります。現実には、AI はビジネス部門が生み出したい成果から切り離されてはならないのです。そのためには、技術者以外のビジネス・ステークホルダーも関与させ、まだ AI を活用していないビジネス部門についても、AI のあらゆる側面で投資していく必要があります。
#7 規制とコンプライアンス
機械学習モデルを本番稼動させる組織は、規制、コンプライアンス、企業リスクの課題に直面しており、慎重に進めなければ、AI 主導の取り組みを台無しにする可能性があります。自社の業界が現在コンプライアンスのルールに直面していなくても、近いうちに直面することを予期しておく必要があります。ビジネスをサポートする堅牢で包括的な AI ソリューションがあれば、こうした未知で困難な過程も乗り越えることができます。
#8 継続的な再学習
パンデミックや経済変化といった変化を取り入れるには、その基盤となる AI ソリューションが必要です。 継続的な再学習は、AI プラットフォームにとって重要な要素であり、モデルを最高の状態に保つことができます。外的環境に左右されないパフォーマンス、リフレッシュ機能、そして、モデル精度が低下してきた場合には新たなチャレンジャー・モデルの作成と推奨を行い常にモデルを高い精度で維持していく必要があります。
#9 スケーラブル AI 購入するか構築するか
カスタマイズ、AI への信頼、AI 人材の採用といった複合的な要素を考慮すると、多くの組織が、カスタマイズオプションとすぐに使える即戦力の両方を備えた AI ソリューションを購入するかハイブリッドソリューションを構築することで、時間を節約し、最も緊急なビジネス課題を迅速に解決できることに気づきます。
#10 AI Cloud
AI Cloud と拡張知能を導入し、企業が AI イニシアチブの可能性を実現することを支援します。拡張知能とは、人間の直感と経験の利点と機械学習の効率とパワーを融合させ、より良いビジネス成果を実現することです。AI Cloud は、あらゆる組織の本番環境への AI の提供を加速させます。データサイエンティスト、データエンジニア、IT およびビジネスユーザーを包括的にサポートし、AI Cloud は、AI のライフサイクル全体にわたってコラボレーションと継続的な最適化を可能にする統一環境となるのです。
まとめ
皆様の組織の AI システムは、10 のキーポイントについてどの程度達成できているでしょうか。DataRobot AI Cloud プラットフォームは、AI で成功を勝ち取る 10 のキーポイントすべてを網羅したエンタープライズ AI プラットフォームです。
2022 年、DataRobot は変化の多い時代に AI で成功を勝ち取ろうとするお客様に対して、単一の統合されたプラットフォームと、製造、流通・小売、金融、ヘルスケアの各インダストリーのドメイン知識を豊富に備えたデータサイエンティスト及びそして AI 戦略策定や次世代プラットフォーム構想を支援する AI ネイティブな戦略的サクセスチームが一丸となって支援してまいります。
メンバー募集
DataRobot では AI の民主化をさらに加速させ、金融、ヘルスケア、流通、製造業など様々な分野のお客様の課題解決貢献を志すメンバーを募集しています。AI サクセスマネージャ、データサイエンティスト、AI エンジニアからマーケティング、営業まで多くのポジションを募集していますので、興味を持たれた方はご連絡ください。
オンデマンドビデオ
AI Experience Virtual Conference 2021
DataRobot 基調講演では、これまでの AI とは異なり、本質的なインパクトを与える AI Cloud のエキサイティングなビジョンをご紹介
オンデマンドで見る
執筆者について
松舘 学(Manabu Matsudate)
コミュニティマネージャー
DataRobotのコミュニティマネージャ。オンラインコミュニティや、ユーザー会を担当。バックグラウンドは、世界最大のビジネスソフトウェア企業におけるディベロッパーアドヴォケイト、エバンジェリスト。BI/データウェアハウス、米国の老舗統計ソフトウェア企業のプレセールス担当。
松舘 学(Manabu Matsudate) についてもっとくわしく